個人事業主・フリーランスにとって、時間は最も貴重な資源です。本業の制作・対応・納品をこなしながら、新規開拓のための営業も自分一人で回さなければならない。気がつくと「営業に時間を取られすぎて本業が回らない」か、逆に「営業に手が回らず売上が不安定」のどちらかに振れてしまう──そんな悩みをよく聞きます。
この記事では、限られた時間で営業の成果を出すための「効率化」の考え方を整理します。テクニックの紹介より、時間配分や作業の切り分けといった土台の話が中心です。「もっと営業の時間を確保したいけれど、これ以上働く時間は増やせない」という方の参考になれば幸いです。
個人事業主の営業時間が「ゼロか過剰か」に振れる理由
まず現状を整理しましょう。個人事業主の営業時間は、しばしば極端な振れ幅を見せます。
ひとつは、本業が忙しい時期。納期に追われ、新規開拓どころではなくなり、営業時間がゼロになります。もうひとつは、本業が落ち着いた時期。売上の不安から営業に時間を投じ、気づけば1日中リスト作りや文面作成に追われている。前者と後者を行き来するうちに、新規の流れは細くなったり太くなったりを繰り返します。
この振れ幅が大きいと、収入も不安定になりますし、営業そのものへの心理的な抵抗も強くなります。「やるときはガッツリ、やらないときは何もしない」の状態を、「少しずつでも止めない」状態へ変えること。これが、個人事業主の営業効率化の出発点です。
なお、営業に手が回らなくなったまま放置するとどうなるかは「『営業に手が回らない』を放置するとどうなるか」で別途整理しています。あわせて参考にしてください。
効率化の前提:時間は「増やす」より「枠を決める」
効率化と聞くと、「短時間で多くの作業をこなす」イメージが先に立ちます。しかし、個人事業主の営業ではむしろ、作業量を増やすより、時間の枠を決めるほうが効果が大きい場面が多くあります。
理由はシンプルです。営業は締め切りがないため、枠を決めなければ「他の仕事に押し出されて消える」か、「気が向いたときに無制限にやる」かのどちらかになります。どちらも、効率の良い使い方とは言えません。
おすすめは、曜日と時間枠を固定することです。たとえば「毎週月曜の朝9時から30分はリスト作り」「水曜の朝10時から30分は送信」のように、カレンダーに固定枠として入れておきます。固定すると、その時間が来たら自然と手が動きますし、それ以外の時間は本業に集中できます。
「忙しい週は飛ばしてもいい」と最初に決めておくのもポイントです。完璧主義になると続きません。多少できない週があっても翌週に戻ればいい、というゆるさを持たせることで、長く続けられる枠になります。仕組み化全般の考え方は「営業を後回しにしないための仕組みづくり」で詳しく解説しています。
「定型化できる作業」と「人にしかできない作業」を切り分ける
時間の枠を決めたら、次に考えるのは「枠の中で何をするか」です。ここで効いてくるのが、作業を定型化できるものと人にしかできないものに切り分ける発想です。
営業の作業を分解すると、おおむね次のように分けられます。
- 定型化しやすい作業:リストの整理、送信用フォーマットへの転記、送信履歴の記録、簡単な返信テンプレートの当てはめ
- 人にしかできない作業:個別の提案文の調整、相手の状況に合わせた返信、商談・打ち合わせでの対話、料金や条件の交渉
効率化の余地が大きいのは、前者の「定型化しやすい作業」です。ここを毎回ゼロから手作業でやっていると、時間がいくらあっても足りません。一方、後者は時間をかける価値のある作業です。むしろ、前者を効率化して空いた時間を後者に回すのが、本来の効率化の目的になります。
「全部を雑にこなす」のではなく、「定型部分を効率化して、人にしか作れない価値の部分に時間を残す」。この切り分けが、個人事業主の営業効率化の中心になります。
テンプレート活用:ゼロから書かない仕組みを作る
定型化の最も身近な手段が、テンプレートの活用です。営業文、返信文、リスト管理シート──毎回ゼロから書いている作業を、テンプレート化して使い回せる形にします。
営業文のテンプレート
初回に送る営業文は、業種・サービス内容ごとに2〜3パターンを用意し、相手に応じて冒頭の一段落だけを書き換えて使います。実績や強みを並べる部分は基本的に共通でよく、毎回書き直す必要はありません。一度しっかり作り込んでおけば、長く使えます。
返信文のテンプレート
「興味があるが今は時期ではない」「料金を教えてほしい」「資料を送ってほしい」など、よくある問い合わせパターンには、土台となる返信文を用意しておきます。そのうえで、相手の状況に応じて1〜2行だけ個別調整する。ゼロから書くより圧倒的に速く、品質も安定します。
リスト管理のテンプレート
スプレッドシートで、送信日・相手・反応・次のアクションを記録する管理表を作っておきます。1件ごとに毎回フォーマットを考えていると、管理そのものが負担になります。
テンプレート化のコツは、「使うほど磨かれていく」前提で運用することです。最初から完璧を目指さず、使いながら反応のよかった表現を取り込み、少しずつ精度を上げていきます。
ツール活用と「やらないこと」を決める発想
テンプレートと並んで、効率化を支えるのがツールの活用です。といっても、特別なSaaSを導入する話ではなく、すでに使っているメール・カレンダー・スプレッドシートを、もう一歩活用するだけで効果が出ます。
- メール:定型文機能・署名機能・予約送信を使えば、送信そのものの手間が下がります。
- カレンダー:営業の時間枠を固定し、繰り返し予定として入れておけば、毎週「いつやろうか」と考える必要がなくなります。
- スプレッドシート:簡単な関数で重複チェック、送信日からの経過日数の自動計算などをしておけば、管理の手間が減ります。
リスト作成の段階では、AIや自動化を活用して候補を集めることもできます。一方、送信のフェーズは、フォームの仕様が企業ごとに違うため、1件ずつ手作業で確認しながら送るのが確実です。「集めるところは効率化、送るところは丁寧に」と分けて考えるのが、現実的な落としどころです。
そして、効率化の最後のピースは、「やらないこと」を決めることです。
すべての営業手段に手を広げる必要はありません。交流会、SNS発信、フォーム営業、DM、メディア運用──全部を同時に進めれば、どれも中途半端になります。自分に向いていないと感じる手段は、思い切ってやらないと決める。「やらないこと」を明確にするほど、残った手段に時間を集中できます。営業手段の整理は「個人事業主の営業方法。何から始めるかを整理する」も参考にしてください。
それでも時間が足りないときは「時間を買う」選択肢
ここまでの工夫を実践しても、本業が忙しい時期は営業の時間を確保しきれないことがあります。そのときに視野に入れたいのが、外注で時間を買うという選択肢です。
外注は「全部を任せる」ことではありません。最も時間のかかるリスト作成や、初回の送信といった定型的で量のかさむ部分だけを手放すこともできます。空いた時間を、商談や提案文の調整など「人にしかできない作業」に充てる。これも立派な効率化です。
BBBメッセージサービスでも、リスト作成・営業文の作成・初回メッセージの送信といった作業を、必要なぶんだけお引き受けしています。やりとりはテキストで完結し、電話や打ち合わせの時間を別途確保する必要はありません。これまで3年でのべ800事業の方にご利用いただいています。「全部自分でやる」か「全部やめる」かの間にある選択肢として、検討の余地があります。
まとめ
この記事のポイントを振り返ります。
- 個人事業主の営業時間は「ゼロか過剰か」に振れやすい。少しずつでも止めない状態を作ることが効率化の出発点。
- 効率化は「作業量を増やす」より「時間の枠を決める」発想で。曜日・時間枠を固定するだけで動きやすくなる。
- 作業を「定型化できるもの」と「人にしかできないもの」に切り分け、前者を効率化して後者に時間を残す。
- テンプレート活用は営業文・返信文・管理表で。使いながら磨いていく前提で運用する。
- メール・カレンダー・スプレッドシートの基本機能でも効率化は十分可能。リスト集めは自動化、送信は手作業という分け方が現実的。
- 「やらないこと」を決めるほど、残った手段に時間を集中できる。
- それでも足りなければ、定型部分の外注で「時間を買う」選択肢がある。
時間は誰にとっても1日24時間です。増やせないからこそ、どこに使うかを意識的に設計することが、個人事業主の営業を続けるうえで大きな力になります。営業への向き合い方そのものは「営業が苦手な個人事業主・フリーランスへ。まず知っておきたいこと」もあわせてご覧ください。
営業の最初の一歩を、外注するという選択肢
「やり方は分かったけれど、自分でやる時間がない」という方へ。BBBメッセージサービスは、営業リストの作成から初回営業メッセージの送信までを代行するサービスです。月額0円・100件¥5,000から、必要なぶんだけ依頼できます。
執筆者:栗原 陽介(TYNコンサルティングオフィス 代表)
BBBメッセージサービス(営業リスト作成・初回営業メッセージ送信代行)の運営者。個人事業主・フリーランスの営業支援に携わっています。運営者について詳しくは 会社案内 をご覧ください。
