新規開拓の方法を調べていると、「フォーム営業」という言葉を見かけることがあります。なんとなくイメージはできても、具体的に何をするのか、本当に効果があるのか、マナー違反にならないのか──気になる点は多いはずです。
この記事では、問い合わせフォーム営業の基本から進め方、成果につなげるコツまでを、これから始める方向けにわかりやすく解説します。電話営業や飛び込み営業が苦手な個人事業主・フリーランスにとって、フォーム営業は現実的な選択肢のひとつです。
フォーム営業が個人事業主に向いている理由
本題に入る前に、なぜフォーム営業が個人事業主・フリーランスに向いているのかを押さえておきましょう。
ひとつめは、コストがほとんどかからないこと。広告のように出稿費用がかかるわけではなく、必要なのはリストと文面、そして送信する時間だけです。
ふたつめは、自分のペースで進められること。電話のように相手と即座にやりとりする必要がなく、文面はじっくり練ることができます。営業が苦手な人でも取り組みやすい手法です。
みっつめは、相手の状況に左右されにくいこと。電話だと相手が不在だったり忙しかったりしますが、フォーム送信なら相手の都合の良いタイミングで読んでもらえます。
こうした特性から、フォーム営業は「営業に多くの予算も時間も割けないけれど、新規開拓は止めたくない」という個人事業主に適した手法と言えます。
問い合わせフォーム営業とは何か
問い合わせフォーム営業とは、営業したい相手企業の公式サイトに設置されている「お問い合わせフォーム」を通じて、自社のサービスを案内するメッセージを送る営業手法です。
多くの企業は、自社サイトに「お問い合わせ」「ご相談はこちら」といったフォームを設けています。本来は顧客からの問い合わせを受けるための窓口ですが、そのフォームを使って、こちらからサービスの提案を送るのがフォーム営業です。
似た手法に「メール営業」がありますが、メールアドレスが公開されていない企業も多い一方、問い合わせフォームはほぼすべての企業サイトに存在します。連絡手段として確実性が高いのが、フォーム営業の特徴です。
近年は電話営業の効率が下がり、飛び込み営業も歓迎されにくくなっています。その中で、相手の業務を中断させずにアプローチできるフォーム営業は、新規開拓の手段として広く使われるようになりました。
フォーム営業のメリットと向いているケース
フォーム営業の主なメリットを整理します。
- 低コストで始められる:送信にかかる費用は基本的にありません。
- 数多くアプローチできる:1件あたりの作業はシンプルなので、対象を広げやすい。
- 相手の決裁者に届きやすい:問い合わせフォームの内容は、担当者や経営者本人が確認するケースが多い。
- 記録が残る:送信内容が文章で残るため、後から振り返りや改善がしやすい。
- 対面・電話が苦手でも取り組める:会話の瞬発力が不要。
向いているのは、次のようなケースです。
- 個人事業主・フリーランス・小規模事業者で、営業に大きな予算をかけられない
- BtoB(法人向け)のサービスを提供している
- 提供サービスが「説明すれば価値が伝わる」もの(Web制作、SNS運用、コンサルティング、各種代行業など)
- 紹介や既存顧客に依存しており、新規の流入経路を増やしたい
逆に、一般消費者向け(BtoC)の商品や、地域を限定しないサービスなどでは、フォーム営業以外の手段のほうが合う場合もあります。
フォーム営業のデメリットと注意点
メリットの多いフォーム営業ですが、注意すべき点もあります。事前に理解しておきましょう。
反応率は決して高くない
フォーム営業は、送った相手の多くが反応しません。これは手法の性質上、避けられません。だからこそ、少数で諦めず、一定の母数を送ることが前提になります。少なく送って「効果がなかった」と判断するのは早計です。
送信先の選び方を間違えると逆効果
闇雲に送ると、自社サービスと関係のない相手にまで届いてしまい、迷惑がられるだけでなく、自社の印象も悪くなります。後述するターゲット選定が重要です。
フォームの仕様で送信できないことがある
問い合わせフォームは企業ごとに項目や形式が異なります。入力必須項目が独特だったり、特定の用途以外の送信を断っていたりするフォームもあります。すべての相手に確実に届くわけではない、という前提を持っておく必要があります。
マナーを守る
フォーム営業は、相手の問い合わせ窓口を使わせてもらう行為です。次のマナーは必ず守りましょう。
- 「営業お断り」と明記しているフォームには送らない
- 一方的な売り込みではなく、相手のメリットを中心にした丁寧な文面にする
- 同じ相手に何度もしつこく送らない
- 誇大な表現や事実と異なる内容を書かない
フォーム営業が「迷惑な行為」になるかどうかは、送り手のやり方次第です。相手への配慮を欠かさないことが、結果的に成果にもつながります。
フォーム営業の進め方
ここからは、フォーム営業の具体的な進め方を4つのステップで解説します。
ステップ1:営業リストを作る
まず「誰に送るか」を決めます。自社サービスを必要としていそうな企業を、業種・地域・規模などの条件で絞り込み、リストにします。
リストには、企業名・公式サイトのURL・問い合わせフォームのURLなどをまとめておくと、送信作業がスムーズです。リストの質が成果を大きく左右するため、ここは丁寧に取り組む価値があります。
ステップ2:営業文(初回メッセージ)を作る
次に、送信するメッセージを用意します。フォーム営業の文面は、長すぎず、相手のメリットを中心に、誰が・何を提供できるのかが一読で分かるものにします。
ポイントは、汎用的な1本の文面をきちんと作り込むことです。送る相手ごとに毎回ゼロから書き直す必要はありません。自社の強みと相手の課題をつなぐ「土台となる文面」を1本仕上げ、それを使っていくのが現実的です。営業文の書き方は反応率に直結するため、別記事で詳しく解説しています。
ステップ3:送信する
リストと文面ができたら、各企業の問い合わせフォームを開き、1件ずつ送信していきます。
ここで知っておきたいのは、フォームは企業ごとに項目や形式が異なるため、1件ずつ内容を確認しながら送る必要があるということです。送信を効率化したいと考える人は多いですが、フォームの違いを無視して機械的に送ると、入力エラーで届かなかったり、相手にとって不自然なメッセージになったりします。1件1件を確実に届けることが、結果的に成果につながります。
ステップ4:反応を管理する
送信後、返信や問い合わせが来たら丁寧に対応します。すぐ契約に至らない相手も、「興味はあるが今ではない」という見込み客かもしれません。やりとりの記録を残し、適切なタイミングでフォローできるようにしておきましょう。
成果につながるフォーム営業のコツ
進め方の基本を押さえたうえで、成果を高めるコツを3つ紹介します。
コツ1:ターゲットを具体的に絞る
「誰にでも役立つサービスです」という送り方は、結局誰にも刺さりません。「こういう課題を抱えた、この業種の企業」と具体的に想定し、その条件に合う相手だけに送るほうが、反応率は上がります。
コツ2:相手目線の文面にする
営業文でやりがちな失敗は、自分の実績や経歴ばかりを書いてしまうことです。読み手が知りたいのは「自分にとってどんな良いことがあるのか」です。相手のメリットを冒頭に置きましょう。
コツ3:一定の量を確保する
反応率が高くない手法である以上、ある程度の送信数がなければ成果は見えません。1日数件でも構わないので、コツコツ続けて母数を積み上げることが大切です。
フォーム営業を続けるための工夫
フォーム営業は、続けてこそ成果が積み上がる手法です。しかし、本業と並行して毎日コツコツ送り続けるのは、想像以上に負担になります。
続けるための工夫として、まず「営業の時間をあらかじめ決めておく」ことが有効です。やる気に頼るのではなく、週の中に営業の枠を固定してしまいましょう。
それでも本業が忙しい時期は、営業の手が止まりがちです。そんなときは、フォーム営業の一部を外部に任せるという選択肢があります。リスト作成だけ、あるいは送信作業だけを外注すれば、本業に集中しながら新規開拓の流れを止めずに済みます。
フォーム営業は「全部自分でやる」必要はありません。自分でやる部分と任せる部分を切り分けることで、無理なく続けられるようになります。
なお、相手に配慮した送り方・マナーは「フォーム営業はマナー違反?適切な送り方とNG行為」、そのまま使える具体的な文面の型は「問い合わせフォーム営業の例文・テンプレート。そのまま使える文面の型」で詳しく解説しています。
なお、送信開始から成果が出るまでの時間軸の目安は「フォーム営業の効果が出るまでの期間|送信開始から成果までの目安」で詳しく解説しています。
まとめ
この記事のポイントを振り返ります。
- フォーム営業は、相手企業の問い合わせフォームから自社サービスを案内する営業手法。
- 低コスト・自分のペースで進められ、対面や電話が苦手な個人事業主に向いている。
- 反応率は高くないため、母数の確保とターゲット選定が重要。
- フォームは企業ごとに違うため、1件ずつ確認しながら送ることが確実な到達につながる。
- 「営業お断り」のフォームには送らないなど、マナーを守ることが成果にも結びつく。
- 続けるには時間を固定する、難しければ一部を外注する、といった工夫が有効。
フォーム営業は、地道に積み重ねれば確かな成果につながる手法です。まずは小さくリストを作り、文面を1本仕上げるところから始めてみてください。
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執筆者:栗原 陽介(TYNコンサルティングオフィス 代表)
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